2016年9月28日水曜日

第36次東日本大震災現地レポート

 兵庫県保険医協会は9月18日~19日の2日間、岩手県・宮城県・福島県の被災地を訪問、広川恵一顧問、松岡泰夫評議員が参加した。
 台風16号災害について状況を伺い、お見舞いをするとともに、現在の被災地の医療・生活を中心とした課題を明らかにすることを目的とし、各地でお話を伺った。

岩手県岩泉町・龍泉洞付近の駐車場はえぐられ、下流域まで浸水域が広がっていた(9/18)

岩手県宮古市の津波で被災した土地で工夫しながら生業の再建を進めている山口さんから近況を伺った(9/18)

岩手県陸前高田市の子ども図書館「ちいさいおうち」で近況を伺った。わらべうたの会などさまざまなイベントなども開きながら活動を継続している。(9/18)

宮城県気仙沼市で医療コーディネーターの村上さん、保健師の山川さん、看護師の及川さんから被災者の住まいや生活の状況などのお話を伺った。(9/18)

福島県楢葉町で宝鏡寺住職の早川篤雄さんから、福島第一原発事故に対する思い、避難者や、避難区域が解除され地元へ帰還した人々が置かれている現状についてお伺いした。(9/19)

2016年7月29日金曜日

第35次 東日本大震災被災地訪問・現地レポート

兵庫県保険医協会は7月16~17日の2日間、宮城県・岩手県の被災地を訪問、広川恵一顧問、林功先生が参加した。
現在の医療課題を中心に被災地の現状を明らかにすることを目的とし、各地でお話を伺った。


医療コーディネーターの村上さんや被災者の生活再建を支える〈ライフワークサポート響〉の阿部さんらと懇談し、仮設住宅での生活の現状や気仙沼市における医療課題、まちづくりにおける問題点などのお話を伺った(7月16日、宮城県気仙沼市)

岩手県陸前高田市で震災半年後から子どものために活動を継続している図書館「ちいさいおうち」(7月17日)

「ちいさいおうち」では、現在利用している子どもたちの様子や、運営などについてお話を伺った(7月17日)

岩手県宮古市で、地元の生業の再建に尽力する菅原さん、山口さんらと懇談した(7月17日)


2016年4月8日金曜日

東日本大震災被災地訪問(2016年1月9日〜11日)

仮設―復興住宅―高台移転
求められるコミュニティーづくり


西宮市・広川内科クリニック  広川 恵一


 協会は1月9日から11日にかけて、宮城県、岩手県の被災地を訪問。広川恵一顧問、林功先生が参加した。この訪問は東日本大震災被災地の現状を知り、現地の方々と交流することを目的に継続しているもの。震災から5年を迎える被災地で、仮設住宅から災害復興住宅へ入居された方や、高台移転した住居で生業を再開する予定の被災者から現状を伺い、課題を学んだ。広川顧問の報告を掲載する。


震災5年目の被災地へ
 今回の訪問の目的は震災5年を迎える被災地の医療課題をうかがうこと、復興住宅・借り上げ復興住宅の課題について現地の方々と交流することでした。
 訪問先は宮城県気仙沼市の赤岩牧沢仮設住宅、南郷復興住宅、本吉地区高台移転住宅、民生委員の小野道子氏、岩手県一関市千厩町の訪問看護センター所長・医療支援ボランティアの菊地優子氏(ともに2013年日常診療経験交流会震災プレ企画講師)および同藤沢町の〈ちくちく工房〉。
 このたびも気仙沼市民ボランティアの村上充氏、新たに〈東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター〉の金田基氏(15年日常診療経験交流会震災プレ企画講師の金田早苗氏のご主人)、〈ライフワークサポート響〉の阿部泰幸氏の協力を得ました。参加は西宮・芦屋支部の林功医師と私、事務局は小川昭、楠真次郎、山下友宙の三氏。


ここは自分たちが生きるところ―そしてそれぞれの課題

 これまで訪問先はおもに仮設住宅・医療施設でしたが、震災5年となると訪問先も仮設―復興住宅―高台移転自立再建と変化がみられます。
 仮設住宅では少しずつ人が減り(被災3県仮設空室率4割、独居死5年で188人)、ボランティアが訪問しても「もういい」との返事で、焦りからあきらめが感じられるケースも増えてきたとのことです。まだ学校の校庭に仮設が残るところもあり、「撤去」「集約化」が課題となる一方「転居」も難しいものがあります。一方、仮設の雪かきやイベントでは、転居した人たちが家のことをおいてでも集まるコミュニティーもできています。
 復興住宅では人は来ないで書類が放り込まれるだけで、「(仮設の時と比べ)寂しくなったね」との声を聞きました。コミュニティーづくりやそのきっかけが切に求められています。
気仙沼市南郷復興住宅

 南三陸の高台移転は計画に時間がかかったことから予定通りに人々が参加できず、商店街の再建やもとの職業継続は難しく、閑散としていました。車で市立本吉病院まで10 分、気仙沼市立病院まで40分、志津川病院まで1時間要します。
気仙沼市本吉地区の高台移転住宅でお話をうかがった

 ボランティアの方々から、公共事業の防潮堤は耐用年数が数十年なのに、千年に一度の大津波に備え何兆円という膨大なお金を使って漁業も景観も損なうなら意味がない、それよりも住宅と浜から高台へ車も人もすぐに駆け上がれる道路がほしいという声を聞きました。
 被災地では医療機関・医師不足で、医療費窓口負担免除の縮小〜打ち切りは、いのち・暮らしに直結します。医療への期待は大きく、安心して受診できるための対応が不可欠です。
 南三陸で家も仕事場も流された縫製工場の3人が仮設にミシンを持ち込んではじめた〈ちくちく工房〉は、被災地のさまざまな企画を作品でサポートして人々を励ましていました。
 仮設―復興住宅―高台移転、それぞれ「ここは自分たちが生きるところなのだ」という思いをもとに、そのとりくみを進めていくことに尽きると思いました。



被災地の歴史から学ぶ
 一関を経て帰路につきました。ここでは杉田玄白と深くかかわりがある医師建部清庵が1755年、飢饉対策に「民間備荒録」を発行し、飢饉には住民と藩が協力して〈粥小屋〉をつくり餓死を防いだという記録があります。その弟子が蘭方医・蘭学者の大槻玄沢。
 その孫が国語学者の大槻文彦で、彼が宮城県尋常中学校校長の時の教え子が大正デモクラシー・社会活動家で知られる吉野作造です。被災地の歴史には学ぶべき多くのものを感じます。

2016年4月1日金曜日

第34次 東日本大震災被災地訪問・現地レポート

兵庫県保険医協会は3月20~21日の2日間、宮城県・岩手県の被災地を訪問、広川恵一顧問が参加した。
現在の医療課題や住まいの問題など被災地の現状を明らかにすることを目的とし、各地でお話を伺った。

岩手県宮古市で生業の再建に取り組む菅原さん、山口さんらと懇談(3月20日)

岩手県大船渡市の仮設住宅で現在の生活の様子などを伺った(3月20日)

宮城県気仙沼市で医療コーディネーターの村上さん、被災者の生活再建を支える<ライフワークサポート響>の阿部さんから、医療課題や生活の課題について伺った(
月20日)

2016年3月15日火曜日

東日本大震災から5年

2016.03.15
暮らし・心の復興を
兵庫県保険医協会理事長 西山 裕康

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から、5年が経つ。
 今なお17万人以上が避難生活を余儀なくされ、兵庫県でも856人が故郷を離れて生活を送っている。岩手・宮城・福島の3県で5万8000人がプレハブの仮設住宅で暮らし、仮設住宅が5年で姿を消した阪神・淡路大震災と比べると、生活の基盤である住まいの再建は遅れている。転居が進むにつれ、仮設住宅に残された社会的弱者、特に単身高齢者のコミュニティー崩壊が進み、孤独死の増加といったような問題も発生している。
 福島からの県外避難者は今でも4万人を超え、福島第一原発の廃炉や汚染地域の除染もままならないなか、電力各社と国は賠償の縮小を画策し、全国各地で原発再稼働を進めている。
 インフラなどの「外身」ではなく、住居・暮らしと心といった「中身」の復興に重きが置かれた政策が求められる。
 兵庫協会は、阪神・淡路大震災の経験を生かそうと、東日本大震災後、仮設住宅などへの訪問活動、健診やコンサートをつづけてきた。県内では兵庫県民主医療機関連合会と協力して、避難者への健診も継続している。
 私を含め、現地に赴けなかった会員がほとんどであろう。ただ、阪神・淡路大震災を経験した人は、その窮状を理解し、共有することができるだろう。また、たとえ自身が被害を受けていなくても、日々の診療の中で、患者さんの病気だけでなく、生活環境を含め、その悩みや苦しみに寄り添うことの多い開業医は、想像する力や思いやりの心を持ち合わせているはずである。それは医師の本質、責任といってもいいかもしれない。
 日々前に進まざるを得ない被災者たちに寄り添い、私たちは何ができるのか。まだ何も行動したことのない会員も、できることはあるはずである。被災地への寄付、生産物の購入、被災地への旅行...少しでもいいから始めてみよう。そして長く続けよう。
 被災者から目を背けずに、現状を知り、想像し、忘れないことが大事である。

2016年1月23日土曜日

第33次 東日本大震災被災地訪問活動メモ・感想

協会事務局・小川 昭



1月9日から11日の3日間、広川恵一協会顧問、林功先生とともに、兵庫県保険医協会第33次被災地訪問活動として、間もなく被災5年を迎える宮城県気仙沼市に向かい、東日本大震災復旧・復興みやぎ県民センター金田基さん、ライフワークサポート響の阿部泰幸さん、ケアサポート村上充さんらから、被災者自身の内部から復興へむかう力を引き出すという意味での「自立」をサポートしてゆく姿に学んだ。

被災者のサポートを現場で支える人々が異口同音に強調するのは、外部から上から目線で「支援」するのでは、たくましい生活力の再建、自己回復力を力づけることにはならないということ。被災者が直面する暮らしの中で刻一刻と変化しながら現れる具体的ニーズに向き合ったサポートこそ、「被災者に寄り添う」ことであろうと感じ、ボランティアの方と被災者が罹災後に気づきあげてきた信頼感の強さに触れるにつけ、「人を救うのは人」「人と人のつながり、ネットワークこそが命を、暮らしを守ること」につながる、と心に浸みた。

南郷住宅(災害公営住宅/復興住宅)の鈴木さんからは、311の生々しい津波被災体験と、避難所での生活困窮、上京していた息子さんとの連絡の困難、昨年末にやっと入居できた復興住宅での暮らしぶり、家計の状況と医療窓口負担減免などの支援の必要性について伺うことができた。

赤岩・牧沢テニスコート仮設住宅の小野さん、本吉・小泉地区のモリヤ(守屋)さんから教えていただいたのは、復興住宅建設や防災集団移転が時間との闘いでもある点。巨大防潮堤建設やショックドクトリンといわれる復興事業に名を借りた大型開発行政が、生活に密着した住宅や道路などのインフラ整備が遅れる原因になっている。111日付河北新報1面に特集されているように、復興住宅でも集団高台移転でも当初の希望者が待ち切れずに別の生活再建を選び、皮肉なことに「空き」が発生していることはその象徴といえる。加えて、東北地方の医師不足による不安定な診療体制、被災者の長くつづく経済的困窮は、医療費免除の継続や拡充を喫緊のものにしている。いずれもが、大切な問題提起であった。

2016年1月14日木曜日

東日本大震災被災地 現地レポート

兵庫県保険医協会は1月9日から11日、岩手県・宮城県の被災地を訪問、広川恵一顧問、林功先生が参加した。
被災地の現在の課題を住民の視点からとらえることを目的とし、復興住宅や防災集団移転先の住宅を訪問し、お話を伺った。
気仙沼市内でワークライフサポート・響の阿部さん、医療コーディネーターの村上さんらと懇談、
被災者の置かれている現状について意見交換した。

気仙沼市・南郷住宅を訪問、入居者の方から現状を伺った。

気仙沼市・赤岩牧沢テニスコート仮設住宅で民生委員・小野さんと懇談、行政の実態などをお聞きした。

気仙沼市本吉町の防災集団移転先で理髪店を再建する方からお話を伺った。

岩手県一関市藤沢町・ちくちく工房で近況を伺った。