2011年4月12日火曜日

現地レポート⑳ 中津正二先生から

 今行かないで、いつ行くのか?   中津クリニック 中津正二  
 
 兵庫県保険医協会がホームページに掲載した現地医療支援の募集に応募し、4月9()10()、歯科医師中心の医療支援ボランティアに随行したので報告と感想を述べる。
歯科医師の方々の目的は口腔ケア用品の無償提供と指導とのこと。4月8日()午後と9日()の診療を休診、4月8日()午後出発した。同日東京で一泊、4月9日()早朝に現地へ向けて出発した。途中のガソリン供給状況は良好とは言い難かったが午前中に仙台市着、正午には石巻市にタクシーで向かった。出発前タクシーの運ちゃんと二人きりで話す時間があり、前々日夜の余震について尋ねてみると“規模は3月11日の本震に比し3分の1の規模ながら、精神的にとどめを刺された地震”とのことであった。 
午後1時過ぎには石巻中学校に到着。早速、同避難所責任者の校長に挨拶、歯科医療支援の主旨を説明、許可を得て活動を開始。私自身は同地には兵庫県医師会のチームが入っているため、成すべきこともなく歯科の先生方の邪魔にならないようにお手伝い、医師会チームの事務職の方や内科医の先生と情報交換などに時間を費やした。特筆すべきは口腔ケアのニーズの多さで、同日午後1時過ぎの時点で救護診療所を受診された方は約90名とのことであったが、口腔ケア用品を希望された方は優にその数倍にのぼり、改めて歯科医師と歯科衛生士さんのニーズの高さを実感した。
次に向かった石巻高校は全体を統括する人はおられず、3チームに分かれリーダーさんと呼ばれる方が、約70人ずつのまとめ役を担っておられた。さし当たって、血圧計・筆記用具等を持って避難所の中へ。数人に話を聞きながら血圧を測ると、被災者の方がにこにこ応対してくれるのに対してこちらの顔がこわばっていくのがわかった。皆、異常に高いのである。10人程測ると3人は200mmHgを越えていた。1週間前に血圧測定をする機会があった時には正常血圧であった方が当日150mHg前後、また元来150mmHg前後で当日190mmHg前後の方もおられた。いずれの方も前回測定機会より高かった。さらにお話を聞くと、4月7日夜の余震で退避と不眠の為ストレスの増加があったことや、数日前より支援物資が量的に充分手に入る様になったものの、東北人の律儀さか、食事を残すことを厳禁されているとのことであった。一部報道では下水やゴミの問題のせいとあったが、かの地の方々はそれらが解決してもなお、相当数の方が支援物資を塩分が濃いという理由では簡単には棄てないように感じた。自身の震災前の食事より塩分が濃いことをほとんどの方が自覚されていた。ひたすら、相当困難ではあるが、塩分の濃いものを控えること、野菜をとる機会があれば逃さないこと、適度な運動を、等々くり返し、この避難所を後にした。
翌4月10日には名取市総合文化会館(約700人収容)を訪れた。こちらは仙台市が近いこともあり、看護師2名が常駐の上、定期的に東北大学から医師が診療に来られているとのことであった。昨日の石巻高校と異なり、明らかに正常血圧の方が多かった。 
さて、以上から私見を述べさせていただく。やはり圧倒的にマンパワー不足のように思われた。余震のストレスに耐え、野菜と魚のない食事で凌いでいる全く罪なき被災者を、さらに血管障害のため泣かせることがあってはならないと思う。また、血管障害の患者が発生すれば、地元の病院はますます機能不全に陥ることになりかねない。ここは非被災地の開業医・歯科医の出番であろう。県医師会はJMATの増派を5月中旬まで募り、5人の枠を3人以上とし看護師や保健師のいない救護所の巡回診療に当てるべきである。保険医協会は団体の枠を越え、5月中旬まで毎土・日曜日に巡回診療できる医師・歯科医師・看護師・衛生士を募り、これを全力で支援するのが望ましい。その際、医師・歯科医師を含むチーム全てに申請さえあればJMATの保険を適応するよう医師会と協議してほしい。 無論、全ての派遣チーム間を極力多くの救護所に行き渡らせるため、医師会との情報交換を躊躇すべきでない。さらには、一人でも多くの地元開業医を見つけ、一緒に巡回し記録をその医師に託すことで引き継ぎの成立を計る取り組みも必要となろう。とにかく、これ以上の防ぎ得る不幸を食い止めるためのマンパワーが必要と私は思う。どうか、医療行政に若干でも責任を持つ立場の方は上記を積極的により上の立場の人に働きかけ、増派を実現できるよう切にお願い申し上げたい。紙面に限りがあり、詳細は省いた。さらに情報をお求めの方は、電話079-561-2277mail; shouji2@aol.com  まで、4月末頃まででお願いします。


現地レポート⑲ 保団連第二次支援隊が宮城協会会員を訪問

 4月11日から宮城入りしている保団連の被災地第二次支援隊(室井正保団連参与、小川昭兵庫協会事務局次長ほか保団連1、愛知2、東京2、群馬、栃木、鹿児島各1名の事務局員10人の編成は12日、2隊4班に別れて津波と火災による壊滅的被害をうけた気仙沼、多賀城地域の会員医療機関を訪問。安否確認とともに、それぞれ37人、36人の会員に3万円から30万円の見舞金を届ける。
 気仙沼地域では判明しているだけで2人の会員が死亡し、8人が全半壊の被害を受けている。気仙沼方面隊は朝7時に仙台を出発。被災状況報告査書、会費減免、特別融資制度、レセプト提出期限延長の届け、医薬品共同購入のお知らせなど、医療機関再開に必要な情報と資料を手渡した。
 明日13日以降も15日まで宮城県に滞在し、順次、南三陸町、石巻、名取市、岩沼市の会員を見舞う予定。

兵庫県保険医協会事務局次長 小川 昭