2014年3月15日土曜日

現地レポート50

東日本大震災 現地レポート50
被災地にあらわれる社会保障政策の貧困

副理事長  川西 敏雄
 協会は2月11日、12日に東日本大震災被災地への訪問活動を実施。岩手県大船渡市、一関市、陸前高田市、宮城県気仙沼市の仮設住宅などを、川西敏雄副理事長、広川恵一理事らが訪れ、住民や医師らと懇談した。川西副理事長のレポートを掲載する。

はじめに

 兵庫県保険医協会は今年2月1112日に岩手・宮城両県の被災地へ、広川理事・川西、事務局の藤田・楠・山下を派遣した。

 定期的に被災地を訪問されている広川理事を団長と頼り、私も参加させていただいた。今年の3月11日で、あの震災から丸3年。阪神・淡路大震災を経験した兵庫県保険医協会は、震災20年を来年に控えた時期での訪問である。この日は、全国的に雪、当地でも数年来の大雪だったそうだ。

・訪問場所と懇談者名

①大船渡市・越喜来甫嶺仮設住宅(及川氏)
②陸前高田市・朝日のあたる家(行本代表、気仙川土地改良区・熊谷理事長、公益社団法人 認知症の人と家族の会岩手県支部・今野世話人
③気仙沼市・ロカーレ(気仙沼市立本吉病院・川島院長、ボランティア村上氏、山梨市立牧丘病院・古屋院長、菊池看護師)
④一関市藤沢町・ちくちく工房(阿部氏他)

・懇談内容

1.被災地の現状と今後の課題については、前回訪問後の特集記事(兵庫保険医新聞1月25日・2月5日号)に詳細が載せられているので、ご参照いただきたい。
2.仮設・医療現場で、医科・歯科連携が従来以上に進んでいる。歯科の治療点数ならびに技術料が異常に低いことに、全員が驚いていた。
3.「引きこもり」が、特に男性で増加している。
4.仮設住宅の方々が手作りした物品を、兵庫県で紹介していることに感謝をいただく。

まとめ

・毎回の記述になるが、この国の社会保障政策の貧困が、被災者に如実に現れている。

・兵庫協会は大震災の洗礼を過去に受けたこともあり、現地における医療活動・窓口負担免除措置実現を求める運動・精神的な寄り添いなどを続けてきた。また今後も保団連とも協力し、活動を続ける予定である。

・現地への働きかけは、震災後経時的に内容も手法も変化する。今一度、ボランティアとは何か再認識が必要と考える。

談話

東日本大震災から3年
人間復興へ一人ひとりが行動しよう

理事長 池内 春樹


2011年3月11日の東日本大震災から3年の月日が流れた。復興は遅々として進まず、未だに約26万人のみなさまが故郷に帰れずにおられる。住民生活の再建・復興は進んでいないが、政府は、復興への真の援助の手を一向に差しのべない。
 阪神・淡路大震災後、被災者生活再建支援法の成立と2度にわたる改正、災害援護資金制度の改善、医療費窓口負担免除措置など、兵庫協会は全国の自然災害被災地と連帯して、地道な運動を継続することで一歩一歩、災害救援施策を前進させてきた。
 また、27次にわたって、西宮・芦屋支部を中心に、東日本大震災被災地の仮設住宅などへの訪問を続け、健診やコンサートなどを行っている。
 子どもたちにはPTSDがみられる。少しでも子どもたちを元気にしたいと、「復興太鼓」の演奏や作文などを通じた、被災地の先生方の努力が続いている。子どもたちが防災マップを作る地域も現れている。
 県内では、福島第一原発事故で避難してこられた方々が「損害賠償裁判」を起こしている。
昨年から県民主医療機関連合会を中心に、協会も協力し「健診」での支援も始まっている。特に子どもたちの被ばく実態調査は重要だ。費用負担なしで健診が受けられるよう求めていきたい。
 3・11の時、阪神・淡路大震災時と同じく、被災者は肩を寄せ合って、助け合った。世界中から援助の手も差し伸べられた。
 3年の月日が流れた今、あの時の支え合いの気持ちが希薄になっている。
 私たちが望む真の復興とは何か。原発再稼働でいいのか。原発に頼らない、新しいエネルギーとは何か。みんながそうだと思える「人間の復興」とは何か。原点にもどって、来年の阪神・淡路大震災20周年を前に、みんなで考えよう。
 国の教訓、自治体の教訓、市民の教訓、それぞれを一人ひとりが考え、行動することが、東日本大震災の被災者の皆さまを支えることになり、来たるべき大震災への備えになるに違いない。