2011年3月17日木曜日

被災者の療費一部負担金免除についての要請書

兵庫協会は3月16日、被災者の医療費一部負担金の取り扱いについての厚労省通知に対し、政府・厚労省、兵庫選出国会議員に以下の要請書を送付。阪神大震災の教訓も踏まえ、すべての被災者が必要な医療を受けられるよう要望した。

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東日本大震災における被災者の医療費一部負担金免除についての要請書
-被災者をふるいわけせず、全被災者の命を救うこと-


兵庫県保険医協会理事長 池内 春樹

 厚生労働省保険局医療課は3月15日、「東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震による被災者に係る一部負担金等の取扱いについて」とする都道府県等に対する事務連絡文書を通知しました。しかし、通知内容は巨大災害の実情にそぐわない不十分な内容です。
 「通知」の趣旨は、被災者の医療費一部負担金等について「猶予」するというものですが、その条件として①住家の全半壊、全焼又はこれに準ずる被災をした旨、②主たる生計維持者が死亡し又は重篤な傷病を負った旨、のいずれかの申し立てをした者であること、としています。
 しかし、巨大災害においては、そうした分類は意味がありません。津波に襲われた家がどうなっているか、一体誰が確認できるでしょうか。今も安否不明者が15000人を数え、家族が離れ離れになっているのに、「主たる生計維持者」がどうなっているのか、幼子に一体誰が教えてくれるというのでしょうか。
 あの1995年1月17日の阪神淡路大震災の折も、厚生省(当時)が最初に出した1月20日付け通知は、今回とまったく同じ内容でした。しかし、このようなふるいわけは現場ではまったく意味がなく、医療現場では一部負担金なしでの医療が行われました。そして、その一ヵ月半後の3月3日、同省は「免除対象者」の要件として、「社保」「国保」「老人」別に整理し、「社保」では「市町村民税が非課税である場合」を追加、「国保」の場合は、「世帯主又は組合員が業務を廃止又は休止した者」「失職し、現在収入が無い者」「その他上記の各号に準ずる者」とされ、「老人」ではさらに「一部負担金を支払うことが困難になるおそれがあると認められる特別な事情がある者」が追加されました。こうして一部負担金免除の範囲を追認する形で広げられ、多くの被災者が医療を受けられたのです。
 今回の厚労省通知は、阪神淡路大震災の教訓を生かすことなく、再び、被災者をふるいわけし、狭い範囲に限定しようとするものです。
 私たちは阪神淡路大震災を経験した開業医師・歯科医師の団体として、政府・厚労省が阪神淡路大震災の教訓を生かして、すべての被災者が必要な医療を受けられるよう、災害救助法を適用し、医療費の一部負担金免除を直ちに実施することを強く要請するものです。