2011年5月11日水曜日

現地レポート28 民間医療機関の再建にも公的補助を

 5月10日、宮城協会の被災会員訪問活動支援として、これまでの訪問活動で確認された医療機関もしくは自宅が全半壊した会員にお見舞金を渡すため、愛知協会、富山協会、京都協会から参加した4人の事務局員が、宮城県石巻市、東松島市の合計21人の会員を訪問。19人の会員に直接会い、お見舞金を渡すとともに、政府への要望などの聞き取りを行った。
 兵庫協会の平田と愛知協会の澤田事務局次長とが訪れたある会員は、地震で診療所が全壊したものの、4月18日から、近くの小野市民センターの応接室で診療を再開していた。同センターは地域の避難所になっており、この日も多くの患者さんの治療を行っていた。この会員は、「阪神淡路大震災のときは民間医療機関の再建にも補助が出たと聞いた」とし、「今回も同様の措置が必要だ」と述べ、政府への働きかけを協会として強めるようにと訴えた。
 また、ある先生からは「多くの患者さんが現在も避難所生活を送っており、診療所を再建したとしても今後、地域に戻って来ないのではないか」と懸念が寄せられた。
 自宅マンションが全壊した石巻市の会員は、震災が起きた翌日から被害が軽微だった診療所に住み、日の光だけで診療を開始。翌々日も、当番医としても診療を行うなど、震災直後から地域医療に奔走された。診療所のある地域は、比較的被害が少ないので、現在も多くの地域住民が、沿岸部の被災地域の知人や親戚の生活支援を行っているが、支援による疲れも出てきており、支援する人の健康管理にも注意が必要だと述べた。また、地域医療について、近隣の石巻赤十字病院が、災害対応で手をとられ、従来果たしてきた地域の中核病院としての役割がなかなか果たせていないと、現場での困難を訴えた。

2011.5.10
 兵庫県保険医協会事務局 平田

2011年5月10日火曜日

保団連 東日本大震災 救援復興FAXニュース 27号

*福島県郡山市で診療を続けられている会員を、福島協会事務局が訪れた。

「原発事故のため、将来への補償が必要になっている」

がれきが残る福島の被災地
 4月25日、警戒区域となった富岡町、緊急時避難準備区域となった川内村が避難先としている郡山市のビッグパレット(県の商業展示施設)で、協会会員で双葉郡医師会長をされている井坂晶先生(大熊町)が、住民への診療を続けているとのことから、福島協会事務局が訪問しました。
 午後4時ころの訪問に、あいにく井坂先生は不在でしたが、ご一緒に診療されている佐藤正憲先生、堀川章仁先生にお会いすることが出来ました。お見舞を述べ、協会からの支援の話をさせていただきましたが、既に医薬品等物資は十分にあること、今は広島県の医療チームが支援に来ていること等を紹介いただきました。両先生とも自宅のある福島市や、親戚の二本松市に避難しながら、井坂先生と3人で避難所の救護スペースで診療を続けているとのこと。お話の最中にも、お年寄りの方が血圧の薬を求めて、あるいはひざの具合が悪いと受診していました。
 そうこうするうち、5時からの医療スタッフのミーティングに合わせ井坂先生も戻ってこられました。挨拶もそこそこに井坂先生はミーティングで、患者さんの受診状況や、郡山の総合病院への患者紹介の状況の確認、明日への引き継ぎ、診療ローテーションの確認などの陣頭指揮をとられておられました。
 ミーティング後のお話では、突然の原発事故で、避難を余儀なくされた無念さを、「思い出すと涙が出てくるので、ここでの診療と対応に力を注いでいる」と語られました。また原発事故については、東電の補償が全ての損害にきちんと対応されなければならないと声を強められました。特に補償対象は様々な業界・分野に及んでおり、声の大きいところに傾斜されることの無いよう、実績に応じた補償をしてほしい。医療機関は患者・住民がそこに戻らないと成り立たないことから、地域への将来的補償が必要になっていること。さらには二重となるローン、リースへの支払い猶予や補償、税金支払いの免除や猶予、放射能に汚染された診療所、設備、医薬品や医療資材の補償等々を語られ、これらの件は数日前に双葉郡医師会として県医師会にも要請協力を行ったが、様々な医療団体、協会からも声を挙げてほしいとのことでした。事務局は、保団連の「被災者への医療提供を確保するための医療機関の復旧・復興に向けた緊急要請」も紹介し、地元協会としても4月23日の理事会で要請を行っていくことを確認したことを伝えました。
 辞去しようとしたところ、井坂先生は歯科コーナーがあることを紹介。そこには協会会員の新妻章先生がおられ、ここでは器材も無く、入れ歯の調整程度しかできない。簡単な歯式などは記録し残しているが、保険請求ができるといいのだがと話されておられました。最後に協会でまだ避難先を把握していない医科・歯科会員の先生への連絡をお願いしビッグパレットを後にしました。
 福島協会では、会員の安否・被災状況確認を進めていますが、確認済みは5月2日現在1332名(91.2%)で、引き続き100%をめざし奮闘しています。

寄せられた要望・意見の内、避難地域の先生からのものを以下に紹介します。
・原発による避難で閉院を余儀なくされている。その間の年間の診療報酬の補償を東電、国でしっかりやってほしい。強く要望します。―南相馬市小高区・医師
・原発により20㎞以内は警戒区域となり、放射能汚染で診療所建物、設備の補償を、医療法人の今後、双葉町での存続の可能性が無いため、医療設備に投資した分のローンの残金の保障、自宅土地、財産、自宅のローン残金保障を被災者に早くして欲しい。―双葉町・歯科医師
・この年での新規開業は、財力も気力も無いのです。(原発事故が無ければ)75歳くらいまでやりたかったが、それが不可となった今、従業員の分も含めて補償をしてもらいたいという思いが東電と国に対してあります。―双葉町・医師
・新潟県三条市の避難所4か所の巡回診療をしている。保障をしっかりして欲しい。―南相馬市・医師

保団連 東日本大震災 救援復興FAXニュース 26号

*大分協会役員で保団連の賀来進理事らは4月30日と5月1日、宮城県南三陸町に歯科医療支援に入った。また4月最終週には保団連はじめ9人の事務局が宮城の会員の先生方を訪問した。

歯科治療機器をレンタカーに搭載してフェリーで宮城県に入る

レンタカーで搬入した歯科機器で治療に当たった
 大分県保険医協会は賀来進副会長、馬場秀樹歯科理事、竹内小代美理事(心療内科医師)、歯科技工士1名、歯科衛生士1名、野崎事務局員計6名を東日本大震災で最も津波被害の大きかった宮城県南三陸町の歌津中学校避難所に派遣し、4月30日と5月1日の2日間歯科医療支援を行った。この支援は志津川病院の歯科口腔外科斎藤先生のとり計らいで、実現できた。
斉藤先生からの事前情報で現在  避難所(160名)にいる被災者の多くの方がご家族や親類・友人を亡くしているということ、口腔ケア、歯髄処置、レジン充填、義歯の修理等の要望があることを知った。この情報を元に治療機器・機材、薬剤、支援物質等準備してレンタカーに積載し、4月28日大分港をフェリーにて出発、翌29日神戸から14時間かけて夜8時に仙台市内のホテルに到着した。
 次の日2時間かけて、南三陸町の鉄骨のみとなった総合防災庁舎や4階まで津波に襲われた公立志津川病院の横を通り、歌津中学避難所に到着した。
30日、1日と校舎2階の教室1室の仮歯科治療室に大分から持ち込んだ歯科用に改良した移動用の理髪用いす2台、ポータブルレントゲン、訪問診療機器、技工用エンジン、消毒器等重装備を設置し、16名の患者の治療(歯髄処置、レジン充填、義歯修理(床裏装含む)、義歯調整、除石、抜歯、口腔ケア等できる限り要望に対する歯科治療)を行った。設備の整った仮歯科治療室での診療が患者から大変喜ばれた。
また、避難所の被災者の方には口腔ケアの方法や大事さを指導し、必要な方に歯ブラシ等を配るなどした。心療内科医の竹内先生は、多くの被災者の方や近くの住人(家は流されていないが、生活物資がない環境にある)と話をされ、心のケアを行い、かなりの被災者が癒された。
歌津中学校避難所の帰りに、南三陸町災害対策本部のあるベイサイドアリーナの医療ボランティア本部に、歯科用薬剤(抗生剤、うがい薬等)、ペーパータオル、トイレットペーパー等々(台車2台分)の医療・生活支援物資を提供した。
5月2日、10時間かけて神戸港に到着し、フェリーにて5月3日朝6時に無事大分に帰着した。充実した6日間であった。もう一度何らかの形で訪れ、医療支援を行いたい。


「医療機関少なく、融資制度拡充で早急に立て替えをしたい」

 4月25日より28日まで9名の支援隊(東京・盛、愛知・日下、静岡・村松、岐阜・福島、大阪・谷、兵庫・楠、鹿児島・生川、保団連・岩下・山田)は、26日に仙台市内の青葉区、泉区、太白区の3区を、27日は仙台以北の大崎市、栗原市、登米市を、3班体制で分担し、被害報告のある会員計75件を訪問、被災状況の把握とお見舞金を手渡した。
 このうち、26日の仙台市内について「都市部の診療所は、見た目の被害は軽微だが、精密機械の破損で診療ができない、あるいは機械破損がなく通常診療ができても、市民のほうに外出・受診手控えの意識が働き、患者数が震災前の半分になったとの声もある。一方で、沿岸部の被災地域はもっと甚大な被害であり、都市部という点ではそういった悩みは言いにくく、先生方の行き場のない声も聞かれた。仙台市内は問題なく動いているように見えるが、完全な復旧・復興にはまだまだ時間がかかるし、対策も遅れているように感じられる」との報告が寄せられた。
 27日の大崎、栗原、登米の三市は仙台から高速バスで1時間、更にタクシーで1時間が必要な遠方で医療機関数も仙台市内と比べて少ないことからこれまで訪問ができなかった地域で、今回初めて被害会員への訪問が行われた。訪問報告では「電気・ガス・水道などの復旧を待たずに診療を再開させて患者さんへの対応を行った先生がたくさんいたことに、地域医療を担う先生方の意気込みを感じた。」「『自分よりもっとひどい被害のところの支援を手厚くしてあげてほしい』とのメッセージを口々にしていたのも印象的」「4月7日の余震の被害も大きく、精神的なダメージも受けているようすが感じられた。」。「登米市は4月7日の余震の震源地にも程近く、2回の地震による被害は甚大かつ拡大している。建物はいずれも大小の亀裂が入り、簡単な修復では今後の大規模地震に耐え切れない。もともと医療機関が少ない地域で、建て替えを考えている医療機関も多く、地元の患者さんが行き場をなくすことにもなりかねない。医療機関再建のための融資制度拡充が急務と思われる。」との状況が寄せられた。
 なお、宮城協会では、被害状況が把握できていない会員が残り約500件余り、また、被害報告はあるが未訪問の地区が仙台以南にまだあることから、これらの状況把握と会員訪問が今後の課題になっている。