「原発事故のため、将来への補償が必要になっている」
がれきが残る福島の被災地 |
午後4時ころの訪問に、あいにく井坂先生は不在でしたが、ご一緒に診療されている佐藤正憲先生、堀川章仁先生にお会いすることが出来ました。お見舞を述べ、協会からの支援の話をさせていただきましたが、既に医薬品等物資は十分にあること、今は広島県の医療チームが支援に来ていること等を紹介いただきました。両先生とも自宅のある福島市や、親戚の二本松市に避難しながら、井坂先生と3人で避難所の救護スペースで診療を続けているとのこと。お話の最中にも、お年寄りの方が血圧の薬を求めて、あるいはひざの具合が悪いと受診していました。
そうこうするうち、5時からの医療スタッフのミーティングに合わせ井坂先生も戻ってこられました。挨拶もそこそこに井坂先生はミーティングで、患者さんの受診状況や、郡山の総合病院への患者紹介の状況の確認、明日への引き継ぎ、診療ローテーションの確認などの陣頭指揮をとられておられました。
ミーティング後のお話では、突然の原発事故で、避難を余儀なくされた無念さを、「思い出すと涙が出てくるので、ここでの診療と対応に力を注いでいる」と語られました。また原発事故については、東電の補償が全ての損害にきちんと対応されなければならないと声を強められました。特に補償対象は様々な業界・分野に及んでおり、声の大きいところに傾斜されることの無いよう、実績に応じた補償をしてほしい。医療機関は患者・住民がそこに戻らないと成り立たないことから、地域への将来的補償が必要になっていること。さらには二重となるローン、リースへの支払い猶予や補償、税金支払いの免除や猶予、放射能に汚染された診療所、設備、医薬品や医療資材の補償等々を語られ、これらの件は数日前に双葉郡医師会として県医師会にも要請協力を行ったが、様々な医療団体、協会からも声を挙げてほしいとのことでした。事務局は、保団連の「被災者への医療提供を確保するための医療機関の復旧・復興に向けた緊急要請」も紹介し、地元協会としても4月23日の理事会で要請を行っていくことを確認したことを伝えました。
辞去しようとしたところ、井坂先生は歯科コーナーがあることを紹介。そこには協会会員の新妻章先生がおられ、ここでは器材も無く、入れ歯の調整程度しかできない。簡単な歯式などは記録し残しているが、保険請求ができるといいのだがと話されておられました。最後に協会でまだ避難先を把握していない医科・歯科会員の先生への連絡をお願いしビッグパレットを後にしました。
福島協会では、会員の安否・被災状況確認を進めていますが、確認済みは5月2日現在1332名(91.2%)で、引き続き100%をめざし奮闘しています。
寄せられた要望・意見の内、避難地域の先生からのものを以下に紹介します。
・原発による避難で閉院を余儀なくされている。その間の年間の診療報酬の補償を東電、国でしっかりやってほしい。強く要望します。―南相馬市小高区・医師
・原発により20㎞以内は警戒区域となり、放射能汚染で診療所建物、設備の補償を、医療法人の今後、双葉町での存続の可能性が無いため、医療設備に投資した分のローンの残金の保障、自宅土地、財産、自宅のローン残金保障を被災者に早くして欲しい。―双葉町・歯科医師
・この年での新規開業は、財力も気力も無いのです。(原発事故が無ければ)75歳くらいまでやりたかったが、それが不可となった今、従業員の分も含めて補償をしてもらいたいという思いが東電と国に対してあります。―双葉町・医師
・新潟県三条市の避難所4か所の巡回診療をしている。保障をしっかりして欲しい。―南相馬市・医師