兵庫、愛知、神奈川各協会の事務局員で、仙台市泉区の医療機関19件を訪問。各医療関に見舞金を届け、被災の状況や要望などを聞いた。
仙台市泉区は仙台市街から比較的近い内陸部で、被害は地震の揺れによるもののみ。大体の医療機関はすでに通常の診療を行なっており、壊滅的な被害は少ない。しかし、中には全壊で診療再開の目処が立たない医院もあった。
ある整形外科医院は建物を立て替えなければ診療できない状態。再建にせよ移転にせよ、年内は診療を再開できないだろうと先生は話していた。院内はまだ未整理で、無事だった医療機器やリハビリ器具の置き場に困っているとのこと。貸し倉庫を探しても見つからず、また長期になれば費用も大きくなると当面の問題を聞くことができた。また、全壊した透析を行なっている医院では、建物は完全にシートで覆われ、破損したガラスや院内の物品が大量に駐車場に積まれている状態だった。院内は天井がはがれた悲惨な状態だが、そんな中でも最低限必要な薬だけは処方するため、先生は午前中壊れた医院で限定的な診療を行い、午後には他院に預けた透析患者の所に行っているとのことだった。テナント開業の歯科医院でも、未だフロア全体が閉鎖されていて休診している所があった。
すでに通常診療を再開している医療機関でも、建物のいたるところに壁のひび割れが見られたり、地盤が沈下し明らかに傾いているなどの被害を受けている所も多い。特徴的なのは、3月11日の地震で受けた被害が、4月7日の余震で拡大されているということ。地震の後に必要な部分を応急的に直して診療を再開したが、その後の余震でまた壊れてしまい、今後の不安と費用のことを考えると再度修理しようとも思えないと、ある歯科医院の先生は話していた。また、地震で倒れたカルテの棚が余震で再度倒れ、新しいものを購入したが、そのままで置いてある医院もあった。まだ余震があるかもしれないという不安が、再建の足かせとなっている状況が伺えた。
健診専門のクリニックも訪問した。ここは、直接的な被害は高額な医療機器がひとつ破損しただけとのことだが、一般的な外来診療ではないため、震災以前のような状況には中々戻らないだろうとのことだった。震災当日も、津波被害を受けた石巻市の漁協の団体健診を行なっていたというが、その後団体の予約はすべてキャンセル、今後も住民に健診を受けようという心の余裕が生まれるまではどうにもならないと話していた。また、先生は避難所生活の中でエコノミー症候群が実際に見られることなどにも触れ、「復興を進めるためにも、被災者の健康確保が第一。こういう時だからこそ、健診と予防を徹底しなければならない」と対策の必要性を訴えていた。
全体として、医院の改修や備品、設備の購入が必要であり、そのための資金として見舞金の提供は非常に喜ばれた。
明日以降の行動は、状況の把握が出来ていない会員医療機関の現状確認と、全半壊の医療機関に見舞金を届けるための訪問となる。今日と同じ地域で、20件程度の訪問を予定している。
2011.4.18
兵庫県保険医協会事務局 納富章宏