2011年3月17日木曜日

現地レポート③ 先遣隊が岩手協会を訪問


住江保団連会長(右)が箱石岩手協会会長(中央)に
支援の決意を伝えた
  住江憲勇会長を先頭に、東北関東大震災の罹災協会を激励訪問している保団連支援の先遣隊4人は17日早朝6時、宮城から陸路猛吹雪の中、岩手県にむけ東北道を200キロ北上。岩手協会に支援物資と見舞金を届けた。
 箱石勝見岩手県協会会長は、「被災後7日経ったが、いまだ会員の安否を確認できない。報道されているように大船渡、陸前高田の市街地は壊滅状態にある。沿岸部の会員医療機関や自宅はほぼ全滅ではないか。避難所などで生存が確認できた会員も一部いるが、依然安否の確認に全力を挙げている。医院や医療機器の損壊状況も集約中。電話などの通信手段も沿岸部では全く復旧していない。県内を移動したくてもガソリンも無いので行けない。約1000人の会員のうち約150人が沿岸部、情報集約に全力を挙げている。」と惨状を訴えた。
 「まずは会員安否確認に全力を。保団連は会員とともにある、寄り添うことを被災会員に一刻も早く伝えたい」と、住江会長は被災した東北各協会を全力で支援する決意を表明した。17日午前11時現在、沿岸部148医療機関(会員)のうち、生存の確認が取れているのは86人。また、14日時点で実施されたファックスによる安否確認には194医療機関(医科127、歯科67)から回答があり、医科3医療機関と歯科6医療機関が休診していることが17日現在判明している。
 内陸部、盛岡の市街地は地震による被害は、東北新幹線の高架橋脚にがひび割れするなどがあるものの、市街地の損傷は、沿岸部の津波被害を比べると比較的軽度。しかし、当地でも食料と燃料の不足は深刻で、一見市民生活も通常通りに見えるが、品切れで閉鎖中のガソリンスタンド前には入荷を待つ自動車が長蛇の列。コンビニエンスストアやパン屋の前には食料を求める住民が寒さと行列に耐えている。
 昨日訪問した宮城県はさらに深刻な様相。電気は徐々に復旧しつつあるが、ガス、水道が復旧しておらず、尽きかけた食料をわけあっている状況。都市ガスの復旧はめどが立たず、被災者が暖を取り、暖かい食品を採るためにも、カセットガスコンロ、ボンベが当面は大量に必要。
 先遣隊一行は宮城県民医連が確保している支援要員用に確保している施設に宿を得たが、そこ自体津波被災している。松島温泉旅館地域は電気は復旧したものの水、ガスは絶たれたままで、食料もない。館内も鏡、ガラス類などが割れたままになっている。周辺道路も津波被害の深刻な爪あとが色濃い。道路状況も幹線を中心に改善しつつあるが、破損した自動車や家屋、瓦礫の山を掻き分けながら進むことになる。

2011.3.17 兵庫協会 事務局 小川 昭

書籍のご案内

2011年2月発行
定価1500円+税
阪神・淡路大震災の経験と記憶を語り継ぐ

被災地での生活と医療と看護
 ─避けられる死をなくすために

兵庫県保険医協会/協会西宮・芦屋支部 編

阪神淡路大震災から16年、被災から復興へ-
その時、医療・看護は、どのような役割を果たしてきたのか。知られざる被災現場での格闘とドキュメント。そして、被災地での「避けられる死をなく すため」に必要なこととは。当時、被災地最前線にいた医療・看護ボランティア達の記憶とそれから。

2011年2月17日
発行:クリエイツかもがわ発行
発売:かもがわ出版
定価:1500+税

ご注文・お問い合わせはTEL078-393-1801 協会西宮・芦屋支部担当まで


 目次 
CHAPTER1 看護訪問ボランティアからの学び
 看護ボランティアについて ~どうして看護ボランティアははじまったのか
 災害時に大きく専門性を発揮する看護
 被災地での看護ボランティア体験看護の原点・ナイチンゲールの看護を学ぶ
 生命を守り、生活の回復と再建を支える看護
 「震災時看護ボランティアマニュアル」を考える
 看護ボランティア どうかかわり、何を学んだか

CHAPTER2 被災地での開業医の課題
 災害と第一線医療の課題 ~地域医療の課題の変化と対応

CHAPTER3 阪神・淡路大震災15年の集い -被災地の生活・暮らし、防災と減災の視点、災害時の医療と対策
 大震災被災者の生活と健康  西宮での継続調査の中から
 生活を基礎にした減災の考え方
 災害時の医療 避けられる死をなくすために
 東京都中野区医師会の「災害時医療対策マニュアル」

現地レポート② 宮城協会を激励訪問


 保団連は3月16日、住江憲勇会長を先頭に、大阪歯科協会事務局1人、兵庫協会2人で構成された、先遣隊を派遣。東日本大震災に罹災した宮城、岩手、福島の各協会を激励し、大阪保険医協同組合の協力で集められた医薬品200万円分と義援金の提供を開始した。
 初日は東京から東北自動車道を360キロを北上し、宮城協会に到着。住江会長は震災と津波被害に遭われた被災者と医療機関に心からのお見舞いを述べるとともに、北村龍男理事長に対し、保団連は全力で会員医療機関の支援に取り組むこと、必要な支援は遠慮なく要請して欲しいことを申し出た。
 北村理事長は、地震発生直後、津波被害に会った地域に訪問診療を予定していたが、偶然別の地域から往診の依頼を受けて出動し、九死に一生を得たエピソードを紹介。クリニックの目前、海岸線から6キロ地点まで民家が丸ごと流されて来ている恐怖の体験を語った。宮城協会会員では依然として気仙沼地域の役員1人と音信不通。安否確認と現状把握、医療支援の可能性を探っている。
 保団連からは3協会に500万円の見舞金を提供、兵庫協会は200万円の見舞金を予定している。

2011.03.16 兵庫協会 事務局 小川 昭

被災者の療費一部負担金免除についての要請書

兵庫協会は3月16日、被災者の医療費一部負担金の取り扱いについての厚労省通知に対し、政府・厚労省、兵庫選出国会議員に以下の要請書を送付。阪神大震災の教訓も踏まえ、すべての被災者が必要な医療を受けられるよう要望した。

→PDFはこちら


東日本大震災における被災者の医療費一部負担金免除についての要請書
-被災者をふるいわけせず、全被災者の命を救うこと-


兵庫県保険医協会理事長 池内 春樹

 厚生労働省保険局医療課は3月15日、「東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震による被災者に係る一部負担金等の取扱いについて」とする都道府県等に対する事務連絡文書を通知しました。しかし、通知内容は巨大災害の実情にそぐわない不十分な内容です。
 「通知」の趣旨は、被災者の医療費一部負担金等について「猶予」するというものですが、その条件として①住家の全半壊、全焼又はこれに準ずる被災をした旨、②主たる生計維持者が死亡し又は重篤な傷病を負った旨、のいずれかの申し立てをした者であること、としています。
 しかし、巨大災害においては、そうした分類は意味がありません。津波に襲われた家がどうなっているか、一体誰が確認できるでしょうか。今も安否不明者が15000人を数え、家族が離れ離れになっているのに、「主たる生計維持者」がどうなっているのか、幼子に一体誰が教えてくれるというのでしょうか。
 あの1995年1月17日の阪神淡路大震災の折も、厚生省(当時)が最初に出した1月20日付け通知は、今回とまったく同じ内容でした。しかし、このようなふるいわけは現場ではまったく意味がなく、医療現場では一部負担金なしでの医療が行われました。そして、その一ヵ月半後の3月3日、同省は「免除対象者」の要件として、「社保」「国保」「老人」別に整理し、「社保」では「市町村民税が非課税である場合」を追加、「国保」の場合は、「世帯主又は組合員が業務を廃止又は休止した者」「失職し、現在収入が無い者」「その他上記の各号に準ずる者」とされ、「老人」ではさらに「一部負担金を支払うことが困難になるおそれがあると認められる特別な事情がある者」が追加されました。こうして一部負担金免除の範囲を追認する形で広げられ、多くの被災者が医療を受けられたのです。
 今回の厚労省通知は、阪神淡路大震災の教訓を生かすことなく、再び、被災者をふるいわけし、狭い範囲に限定しようとするものです。
 私たちは阪神淡路大震災を経験した開業医師・歯科医師の団体として、政府・厚労省が阪神淡路大震災の教訓を生かして、すべての被災者が必要な医療を受けられるよう、災害救助法を適用し、医療費の一部負担金免除を直ちに実施することを強く要請するものです。