2011年11月10日木曜日

現地レポート39 姫路市・池内春樹先生より

協会の池内春樹理事長は、10月14~15日、東日本大震災の被災地である岩手、宮城、福島を訪問。地域医療を続ける県立病院や、仮設住宅、被災協会を激励するとともに、関係者に現状を聞き、改めて被災地のニーズの把握を行った。その上で、阪神・淡路大震災時に協会が取り組んだ「仮設住宅調査」の内容を伝え、仮設や復興住宅で起こった孤独死の悲劇を繰り返さないためにも、医療・福祉拡充を求める運動を強める必要性を各所で訴えた。池内理事長のレポートを紹介する。

 伊丹から空路、花巻へ。空港では、震災直後から岩手県の支援を続ける青森協会の中村寛二参与、事務局の藤林渉さんの案内で、民話の里・遠野を経て、一路陸前高田へ。
 陸前高田では、二つの仮設団地を訪問。竹駒町相川の仮設団地では、青森協会が中心になり、避難所の人たちを招待した「浅虫温泉慰安ツアー」で元気になられた方の住居に案内していただく。この仮設住宅は、新築の文化住宅のようにきれいでしっかりしているものの、「4畳半二間で狭いのが困る」とのこと。先日も、お孫さんが来て7人で寝たとの話。医療機関へは巡回バスの送迎があるそうだ。
 陸前高田第一中学校の仮設団地は、高台で多くの人が逃げのびてきたところに建っている。ここの仮設住宅は、工事現場の建物のよう。断熱剤が入っていないので、後から取り付けたとのことだが、冬に向かい不安がつのる。仮設の岩手県医師会・高田診療所が併設されている。
 続いて仮設の岩手県立高田病院へ。ここで陸前高田市教育委員会・横田祐佶委員長に話を伺う。横田先生は先述の高田一中の避難所長も務めておられたそうだが「常に皆が顔をあわせていた避難所と違い、いかに仮設住宅でコミュニティをつくるかが重要。心のケアの問題等、十分に配慮して取り組みたい」と、課題を語ってくれた。
 高田病院院長で、10月30日の日常診療経験交流会にも来ていただいた、石木幹人先生に病院を案内していただく。「仮設の40床の入院病棟を新たにつくる許可がでた」と、ひとまずほっとしておられた。
 夕方には盛岡の岩手協会で、箱石勝美会長にお会いする。岩手の現状をお聞きし、被災地訪問の感想を伝えた。岩手県は山が多く平野が少ないので大変とのこと。
 翌日15日は宮城協会を訪ね、北村龍男理事長から現状をいろいろお教えいただいた。中でも東北大学医学部が中心となる「メディカルバンク構想」は、阪神・淡路大震災後の「医療産業都市構想」そのもの。その後福島へ移動し、保団連公害視察会に合流した。
 被災三県はこれから冬に向かい寒さ対策、インフルエンザの蔓延など、課題が山積している。また、コミュニティを作るために、集会場も完備した恒久的な県営住宅の建設が待たれる。
 今回の訪問では、訪問した各所で、仮設や復興住宅での孤独死など阪神淡路大震災の経験をお話し、協会が当時行った「仮設調査」の結果から、予想される課題を伝え、資料をお渡しした。ハコモノ復興でない、人間本位の復興のために、大きな運動をつくっていく必要性を痛感した。