福島県:「積算の放射線量は、まだまだこれからが問題だ」
福島県の被災地 |
当初は、原発事故で入れない地域を除き、津波の被害が伝えられる沿岸部(北と南)から会員訪問を進め、今は、原発事故で立ち入れない範囲(警戒区域)の周辺部(緊急時避難準備区域)からその外側へと、範囲を少しずつ広げながら行っています。それはつまり緊急に避難を強いられた人々の避難経路とも重なります。
昨10日、事務局・井桁が田村郡小野町、田村市滝根町・大越町・常葉町の先生方15件を訪問しました。いずれも福島第一原発から30Km~40Kmに位置し、あぶくま鍾乳洞などがあります。
「3月だけで300万円近い赤字。」
「自宅は全壊し、更地となったよ。」
「もともと“過疎地”なので、毎年数%程度の人口減少はあると覚悟しているが、高齢単身者など一度子どもの所に避難された方たちが戻ってきてはいるが、震災前の8割程度。医院経営も見直しをしていかなくてはいけない。」
「積算の放射線量に関しては、まだまだ、これからが問題。」
「連休明けからぼちぼちと患者さんが戻ってきてはいるが、農村地帯であり、原発事故の影響により患者減が心配される。」
「町の中核病院の入院機能が回復せず、重症の患者は隣町に送るようになっている。」
「幸いにも電気・水道・ガスが無事であり、3/15休診したのみ。当初は双葉郡内からの避難者への投薬や避難所での診察等。様々な情報による混乱や物資不足で震災後2週目が一番辛く、避難所へ食料を貰いに行きながら診察していた。私(御子息)は、他県に席があり、そこの皆が、食料・水・燃料等の物資を運んできてくれたので助かった。原発事故の影響か、自殺者が増えている。今後も増えそうである。」
等の声が寄せられています。
また、「避難当初は消防団員(あるいは家族?)が、高血圧の薬などのメモを持参し、薬が欲しいと来院した。緊急時ということで持たせた。」等の話をされていたとのことでした。
今は避難者はより遠方の避難所に、また旅館等の二次避難所に移られています。先生方の中にも避難された方もおられましたが、今はほとんどの先生が通常診療に戻っています。どの先生も患者数は、2・3割減と応えていたそうです。もちろんこれらの地域は農村部ですが、放射線の影響で作付は行っていますが売れるのかどうかもわからず、地域経済へのダメージは大きく、現在のそして将来の補償の問題も含めどうなるかの展望が見えません。
ある先生が、「自殺が増えている」と語ったそうです。 将来を展望できる全面的補償がすぐに行われること・約束されることが本当に急がれています。 地域がこういう状況ですので、先生方も医業経営としてもこれからを心配しながら診療を続けています。
また原子力損害賠償紛争審査会が第3回まで開催され、「・・・原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針」が出されていますが、対象区域は、警戒・緊急時避難対象・計画的避難がメインで、それ以外の地域の損害については「政府等による出荷制限指示等に係る損害について」のみが対象とされ、それ以外は今後の課題とされてしまっています。
医業自体も、それ以外の業種と同様に「営業損害」での請求となると考えられますが、前述のように周辺地域・福島県内では少なからず経営的影響を受けることとなっており、この損害も補償させることが必要です。
さらには、第3回審査会に出された厚生労働省提出資料では、医療機関の項目には、病院の標記しかない上、患者目線の損害項目のみです。厚労省に、医科・歯科診療所の項目を明記させ、病院も含め、医療崩壊の中、地域医療を担ってきた医療機関の損害について記述させる必要があります。もちろんこうした指摘を考慮してか欄外に「※経済的被害を受けた患者数、医療機関数、医療従事者などについては、今後精査が必要」と逃げを打っているのも悔しい限りです。