2013年8月25日日曜日

現地レポート47 7/13~15被災地訪問参加記

7月1315日に協会が実施した被災地訪問の参加記を掲載する。

まだまだできることがある

尼崎市・薬剤師 滝本 桂子

 

 最初の訪問先・大町病院では、猪又義光院長はじめ昨年の日常診プレ企画にも参加いただいた藤原珠世看護部長が業務の忙しい合間をぬって、病院の一室を手作りのコンサート会場にして迎えてくださった。私も、ロビンさんの演奏は初めてで民族音楽についてもほとんど知識のない中で興味津々だったが、まさにカルチャーショック!アフリカから南米、ヨーロッパ、世界中の手作りの民族楽器が奏でる音楽が聴衆の患者さんや病院で働く人たちの心の奥深く届く様子を目の当たりにし感動した。

2日目は、仮設住宅を回った。一関市千厩町では予定していた仮設住宅の集会場が参院選のため使えず急きょ「酒のくら交流施設」を使用することになった。

次の訪問地は、気仙沼市・五右衛門ヶ原運動場住宅。ここには宮城県保険医協会井上博之副理事長が参加され、被災地での医療の現状、特に3月で打ち切られた宮城県での医療費窓口負担免除の復活を求める運動について訴えがあった。

ロビンさんの演奏が始まると、不思議な形の不思議な音のする楽器に皆目を丸くし、彼の静かだけれどユーモアに富んだ語り口に引き込まれ、リラックスしていく様子がわかった。訪問看護師の菊地優子さんが同行してくださっていて、最後は彼女が率先して音頭をとって、炭坑節の演奏に合わせて盆踊りの輪が広がった。

2日目最後の訪問は、赤岩牧沢市営テニスコート住宅。後日、兵庫協会で被災地の課題を報告してくださった民生委員の小野道子さんの出迎えを受け、時間が経つにつれて仮設には高齢者、障害者といった社会的弱者が取り残されている現状についてお聞きしました。

3日目は、陸前高田市に向かった。テレビの映像は幾度となく見ていましたが、広大な土地が更地となり、今も取り壊さずに残る建物もある現状に言葉を失った。

「朝日のあたる家」は、その陸前高田市の小高い丘の上に建てられたコニュニティハウス。NPO法人福祉フォーラム東北の運営で、東京から来られた江連素実さんを館長に、4人がスタッフとして携わっておられた。ここを拠点に、コンサート、健康相談、食事会、体操教室、手芸教室と幅広い活動が続けられている。天然木の温もりのある心地よい空間のホールで、私たちは「健康相談と薬の話」をさせていただいた。

最後の訪問となったのは、こども図書館「ちいさいおうち」。ここには2年前の日常診でご講演いただいた県立高田病院前院長の石木幹人先生が来てくださった。

うれし野こども図書室高橋美和子理事長の絵本「アフリカの音」の読み聞かせとコラボで行ったロビンさんの演奏は、わずかな打ち合わせだけで即興だったにもかかわらず圧巻だった。図書館の関係者からは再演の申し出を受けた。私もその実現のための協力が出来ればいいなと思っている。

安全運転で長時間の移動を支え、企画を調整してくださった事務局の方々、何よりこのような機会を与えて下さった先生方に心よりお礼を申し上げます。

 

復興遅々として進まず 神戸から訪問続けたい

伊丹市・薬剤師  長光 由紀

 

被災より2年4カ月。福島県南相馬市、岩手県一関市、気仙沼市、陸前高田市を訪問した。メンバーはロビン・ロイドさん(民族音楽演奏家)、川西副理事長、広川理事、滝本薬科部代表、事務局2人と私の7人。13日午後、仙台空港到着、前線の影響から天候は悪く気温23度で伊丹とは10度も違う状況だった。

 初日は南相馬市大町病院。昨年日常診プレ企画講師として招いた藤原看護部長とスタッフに出迎えられ、猪又院長も演奏会に参加。院内患者やスタッフも含め、多くの参加者でロビン・ロイドさんと「七夕」などを演奏、参加者も楽器を演奏する形式で大変好評だった。

その夜、病院と関係のある地元建設会社・石川社長の話を伺った。原発被災時、防護服着用で立入禁止区域の作業をしたのは地域建設会社と自衛隊で、東京電力からは動きがなかったこと、社宅を高台に作り津波被害は受けていないことなど、原発立地に至った歴史、地域の江戸時代(大変な飢饉にみまわれた)からの状況など話は尽きなかった。特に「福島原発は東京電力のもの。東北のために全く使われず、こういう被害だけを受けたことは許せない」という言葉は胸に突き刺さった。

 2日目一関市千厩町。酒のくら交流施設は元酒蔵で涼しく、音がよく響く。仮設から離れていて参加者が少なく残念だったが、健康アドバイスの時間をもてた。被災後一人訪問看護師として活躍した菊池優子さんと合流。地域が広いため現在仕事は直行直帰とし、訪問スタッフが地域貢献をしているとのこと。午後は2カ所訪問。五右衛門ヶ原運動場住宅、赤岩牧沢市営テニスコート住宅へ。ほとんど高齢者が多く、震災による心の傷を少し発散された。津波で全てを失った民生委員・小野道子さんのリーダー力と人柄が大きいと感じた。宮城協会の井上博之副理事長も参加された。

 3日目陸前高田市。「朝日のあたる家」は東京、四国から震災後移住された館長江連(えづれ)館長、心の相談員行本さんがカフェや予約制の風呂を行う。山の緑が借景の小ホールで演奏会等を開催。早朝だったが参加者と薬相談をも気軽な形式でできた。高田病院・石木前院長も参加されたこども図書館「ちいさいおうち」では盛岡からの髙橋理事長、スタッフと共に絵本の読み聞かせとアフリカの音を味わうという贅沢な時間を持てた。

 今回の訪問で地震、津波で、家族を、家を、職場を、町を、地域全体を失い、山あいの仮設住宅に住んでおられる方々がまだまだ多く、海辺の地域の復興は遅々として進んでいないことを再確認した。医療においても特例として認められていたことが次々と解除され、被災された方々を更に苦しませる状況となっている。そして今後も心を生活を支えていかなければと感じた。